ニホン茶よ栄あれ
パン食に日本茶 
  
 老夫婦二人だけでとる我が家の朝食は、パンと卵、ハム、ソーセージ
 それと生野菜果物という取り合わせで、
 これが毎日続く。
 日本の多くの家庭の朝食と同じだろう。
 飲み物は紅茶、コーヒー、日本茶である。
 ちょっと変わっているのが、飲み物の決まりである。
 月曜日と火曜日は紅茶を飲む。水曜日と土曜日、日曜日はコーヒーを飲む。
 そして木曜日と金曜日は日本茶を飲む。
 これでおわかりいただけるように、まず曜日によって飲み物が決まっている。
 容器はすべて取っ手つきのいわゆるコーヒーカップとかティーカップと
 いわれるものである。
 でもカップは飲み物の種類によって替える。コーヒーを飲むとき使うカップ、
 紅茶を飲むとき使うカップ、
 それと日本茶を飲むときのカップがそれぞれある。
 朝食のテーブルのセッティングは私の担当で、月曜日なら月曜日のための
 紅茶に使用するカップをテーブルに並べる。
 日曜日なら日曜日用と決めているコーヒーカップを並べる。
 だからテーブルに置かれているカップをみれば、今日は何曜日?かがすぐにわかる。私が勘違いしないかぎり。
 もうひとつ、ほかの家庭と違うかなと思うのが、日本茶である。
 紅茶やコーヒーを淹れるとき、どの家庭でもいわゆるポットを使うであろう。我が家ではこれを日本茶にも使用するのである。
 日本茶の葉を紅茶と同じようにポットに一定量いれて、お湯を注ぐのである。
 熱湯を注がれた日本茶は耐熱ガラスの透き通ったポットの中で抽出されて、日本茶独特の黄緑色の液体を作る。
 その色はなんとも美しい。

 日本茶をこのような淹れ方で飲む以前、私は日本茶は緑茶というよりもむしろ黄茶ではないかと思っていた。
 急須から内側が白色と かグレイの茶碗に注がれるお茶はほとんど黄色系である。
 これをなぜ緑茶のいうのか不思議に思ったのである。
 それがポットに淹れた日本茶をみて、なるほど緑茶だ、グリーンティーだと再認識したのである。
 さらにカップはタイ製の薄い緑色のものを使う。シェラドン焼という陶器で、コーヒーやティーを飲むための取っ手付きのカップで、
 外側も内側も淡いグリーンでできている。
 ポットの日本茶をこのカップに注ぐと、表面は見事な緑色を保ってくれている。
 私はこのようにして日本茶を飲んでみて、日本茶とはなんと美味しい飲み物であろうか!と感激したのである。
 世界一の飲み物だ、と叫びたくなった。
 もちろん紅茶もコーヒーも美味しい。でも日本茶はこれに劣らず美味しいし、
 優れた独特の苦みと甘みと馥郁たる香りの絶好のコンビネーションがある。
 これを洋風朝食と一緒に摂る。
 これが我が家の朝食のもう一つの特色である。
 日本茶を飲む朝であっても、食事はパン食で変わらない。


 パン食に日本茶のきっかけ
 
 我が家の朝食がこのようになってから、かれこれ三十年は経つだろうか。
 きっかけは私たちがタイのバンコクに住んでいたことだった。
 ご存知のかたも多いだろうが、バンコクは北緯十二度で亜熱帯に属していて、四季がなく、一年が乾季雨季
 (あるいは乾季暑季雨季)に分かれる暑いところである。
 だから飲み物もどうしても冷たいものが中心になる。
 でも、仕事や観光で日本からくる知人や友人たちは、おみやげに日本茶を持参されることがよくあった。
 新茶の季節などとくにお茶のおみやげが多かった。
 当然、日本からタイを訪問される方々は「おみやげはなにがいいだろうか?」といろいろ考えられるに違いない。
 スーツケースは旅行用の衣類などでいっぱいだから、軽くて珍しそうなモノはなにかないか、ということになるだろう。
 そこで日本茶というアイデアに行きつく。タイでは絶対に採れないし、新茶は日本でも貴重な季節の贈り物だ。
 というわけで、私たちも多くの方々から日本茶をおみやげにいただいたのである。ありがたいことだった。
 でも・・・。である。それまで「日本茶は急須に淹れてお茶碗で飲む。そのとき和菓子もあるとさらに美味しい」
 という固定観念にとらわれていた私たちは、いただいた日本茶の密閉袋を前に途方にくれた。暑いタイで熱い日本茶を飲む。
 和菓子もないし、なかなかそういうトキを持てそうにない。
 もちろん日本茶を縦長のポットにいれて冷蔵庫で冷やして飲むことは実行し、それなりに美味しくいただいた。
 でもそれだけでは、なかなか消化できないため、いただいた日本茶の袋が台所にどんどん積みあがっていったのである。
 いつもの通りのある猛暑の夕べ、私が日本からの来客からいただいた日本茶の袋を持って帰宅したときだった。
 家内が「また日本茶?」と反応した。せっかく日本から持ってきていただいた方には甚だ失礼な話だが、
 そこには家内と私しか居ず、内輪のことだったのでご勘弁願いたい。
 私も返す言葉がなく、その後夕食の時間になったのだが、どちらからともなくふと思いついたように、
 「私たちは毎朝熱いコーヒーや紅茶を飲んでいるのに、
 なぜ日本茶を飲まないのだろう?」ということが話題になった。
 結論として、「日本茶は和食と一緒に飲むものだから、パン食の我が家の朝食にはなじまない」という
 変わりばえのしない理屈になったのだが、私はふっと思いついて、「われわれは暑いバンコクにいて、
 なぜか毎朝熱いコーヒーや熱い紅茶を当たり前のように飲んでいる。それなら試しに、紅茶やコーヒーと同じように
 日本茶を淹れて飲んでみようか?」と提案みたいなものをしてみたのである。
 「そうね一度試してみようかしら」と家内が応じ、日本茶をパン食とともに飲む我が家の習慣が始まったのである。
 これが大成功だった、と言えるだろう。
 パンやハムや生野菜とともに飲む日本茶。急須でなくポットに入れたさわやかなグリーン色のティー。
 シェラドン焼の取っ手つき茶碗で鮮やかな緑となる緑茶。緑茶だ緑茶だと実感しながら口で啜る感動!
 われながら素晴らしい発見だった。
 それからというもの、溜まっていた日本茶の袋が、あれよあれよと言う間に減っていった。
 我が家の朝食がさらに内容豊富なものになった。
 曜日ごとの飲み物
 
 
けれども毎朝日本茶というわけにもいかない。もちろん紅茶も飲みたいしコーヒーも飲みたい。さあどうしよう。
 そこで思いついたのが、曜日によって飲み物の種類を決めるというアイデアであった。
 生来日課表を作るのが私の趣味なので、こういうことは簡単に思いつくのである。
 このようにして我が家の朝食の飲み物の習慣が出来上がったのであるが、最近、木曜日・金曜日の日本茶が時により、
 中国茶に代わることもある。ジャスミンティーとかウーロン茶とかである。
 要するに我が家にある緑茶系の飲み物は、その範囲を広げているのである。
 けれどもコーヒーの曜日とか紅茶の曜日とかはほかの飲み物に代わることはない。
 コーヒーの種類、紅茶の種類が代わ
るだけである。
  欧米にお勧めの日本茶
 
 近年、日本茶の消費が増えない、逆に減少しつつあるといわれている。
 日本茶がペットボトルで売られるようになり、若い人々が飲むようになり、消費が大幅に増えたと思っていたので、
 これは意外だった。
 そういうことであれば、今度は日本茶を海外に輸出する別の方策を練る必要があるかもしれない。
 その一つの方法として、欧米の家庭に日本茶を紅茶のようにポットで飲んでもらう方法を提案するのは
 いかがであろうか?
 私はかつて静岡の日本茶輸出業者に、このような提案をしてみたことがあるが、その後どうなったかは聞いていない。
 
                                                             (2009.11.27)